ゆるるん自宅警備

大人になりたくない大人のブログです

じいちゃんとばあちゃんのケンカ

うちのじいちゃんとばあちゃんはよくケンカしていた。

自営業だから毎日顔を合わせていれば仕方ないのだろう。

ケンカをしていても鶏肉は捌かなきゃいけないし、調理もしなきゃいけない。

お客さんは待ってくれるわけじゃないので二人はケンカしながら仕事をしていた。

子供の頃からそんな光景を見るのは慣れっこだった。

「あぁ・・・またケンカしているんだな」位にしか思っていなかった。

そんなある日ばあちゃんが「あんた!あたしとお父さん離婚するからどっちに着いてくる?」と聞かれた。

「何言ってんの?」と言う気持ちでいっぱいだった。

親もいないのに、祖父母まで離婚されたらたまったもんじゃない。

それにそんな事いきなり言われても答えに困ってしまう。

でもばあちゃんは本気の顔していた。

じいちゃんは「全く・・・馬鹿を相手にするのも疲れた・・・」とぼやいていた。

ばあちゃんは荷物をまとめて「あたしだって疲れたわよ!こんなところにいつまでもいたら気が狂うよ!」と怒鳴り散らして出て行った。

結局私は「どっちについてくるか?」と言う質問に返事をしないまま置いて行かれた。

不安になってじいちゃんに「ばあちゃんいつ帰って来るのかな?」と聞いたら「どうせすぐ帰って来るよ・・・全く困ったもんだ・・・」と言ってため息をついていた。

夕方になってもばあちゃんは帰ってこなかった。

店でじいちゃんの手伝いをしながらばあちゃんの帰りを待った。

夕食の時間も帰ってこなかった。

じいちゃんが鶏肉の残りをひき肉にして「つくね鍋」を作ってくれた。

味噌味のお鍋のスープが温かくて「きっと大丈夫」と言う気持ちにさせてくれた。

晩御飯を食べてお風呂を済ませお布団に入っていたら玄関の開く音がした。

ばあちゃんが帰って来たんだ!と思い飛び起きてばあちゃんのもとに走った。

ばあちゃんの右手には「たこ焼き」の入ったビニール袋を持っていてソースのいい香りがした。

「ばあちゃんおかえり!待ってたよー」と飛びついたら「あんたを置いていけないでしょう?これお土産。一緒に食べよう」と言ってたこ焼きを食べた。

たこ焼きを食べながら「ばあちゃんどこに行ってたの?」と聞いたらカラオケでストレスを発散してきたらしい。

でもストレスは消えてもじいちゃんの事は腹が立つらしくて「私は離婚するなら財産半分持って行く!」と鼻息を荒くしていた。

たこ焼きを食べた私は、ばあちゃんが帰って来て安心したのでぐっすり眠った。

 

次の日学校から帰ってきたら居間にビニールテープが貼られていた。

家中あちこち貼られていた。

「何これ?」と聞いたら「半分にしたんだ!こっちからここまであたし、あっちはお父さん!。あたしだって働いたんだから財産は半分こなんだ!だからこっからここまであたしの物だよ!」とじいちゃんに届くようなデカい声で説明した。

じいちゃんは「はぁ~・・・バカバカしい・・・」とやっぱりボヤいていた。

ご飯を食べる時もお茶を飲む時もばあちゃんは「ちょっと!お父さん!こっちに入ってこないでよ!」とビニールテープをアピールした。

じいちゃんはイラっとしたのかムキになり「じゃあこっからこっちは俺のもんだからテレビも俺のもんだな・・・」と言って水戸黄門を見始めた。

水戸黄門を見終わったじいちゃんが店に戻るとすかさずばあちゃんが「ちょっとあんた!ピコピコ取りなさい」とリモコンをこっちに持ってこいと指示を出した。

テレビの存在をすっかり忘れていたらしい。

指示を出す方はいいが、出される方はたまったもんじゃない。

ばあちゃんの指示は「まごのてを取れ」とか「ティッシュを取れ」とか「新聞を取れ」とかうるさかった。

じいちゃんは、ばあちゃんが居る時ギャーギャー言われるのを嫌がり、テープの存在を気にして生活していた。

ばあちゃんが居なくなったとたんテープを飛び超えて生活してた。

そんな事を知らないばあちゃんは「リモコン」も「まごのて」も「新聞」も全部私が動かしていると思っていたらしく「またあんたは!ピコピコ動かさないでよ!」と怒られた。

確かに私はどっちのスペースにも行けるので疑われても仕方ないのかもしれない。

でも「じいちゃんはばあちゃんが居ない時にテープを超えていますよ」などと言えるわけがない。

理不尽に怒られた私はただこの夫婦喧嘩が早く終わってくれ・・・と願う事しかできなかった。

 

今日もケンカしてるのかな・・・と思いそ~っと家に帰ったらじいちゃんとばあちゃんが何だか騒いでいた。

じいちゃんが「ほれ!超えてやる!ほら!どうだ!まいったか!」と言いながらテープの上を足でちょんちょんと踏んでいた。

ばあちゃんは「あ!お父さん超えたね!あたしだって負けないよ!」と言ってやっぱり足でテープの上をちょんちょんしていた。

なんだかんだ二人でキャッキャウフフと騒いで笑っていた。

「今日で喧嘩が終わりそうだ・・・」と安心した。

私の予想通りその日のうちにビニールテープは取り除かれた。

何だかんだケンカしてもじいちゃんとばあちゃんは仲直りするのだ。

一緒にいる時間が長いのでケンカもデカいのは仕方ないのかもしれない。

機嫌がよくなったばあちゃんに「そういえば何でケンカしていたの?」と聞いたら「畑に行くじいちゃんに持たせた弁当の中身が蕎麦屋で頼んだ天丼だったって言うのがバレて怒られたから逆切れした」らしい。

ばあちゃんはスーパーのお惣菜コーナーで買った物をいかにも自分で作りました!って見せるのが得意なのだ。

じいちゃんは「買ってきたもの」が好きじゃないのであれこれ見せ方を工夫する。

ゴミなんかも気を付けてばあちゃんは証拠隠滅をちゃんとしていた。

でもさすがに蕎麦屋の天丼は家で作るのと味が違うしを弁当箱に移しただけだと見た目的にも「移し替えただけ」って言うのがバレバレだったのだろう。

理由を聞いたらじいちゃんが「馬鹿を相手にするのも疲れた・・・」と言うのも無理はない。

その後しばらく経って何も学習しなかったばあちゃんは、あの時の喧嘩を忘れて蕎麦屋の天丼を弁当箱に詰めていた。

ばあちゃんは私に向かって「ねぇねぇ!お父さん騙されてたよ!蕎麦屋さんの天丼入れたんだけど、全部ペロリと食べて帰って来たわよ!」と嬉しそうに報告してきた。

でもじいちゃんがその後ぼーっとしながら「○○蕎麦屋・・・うめぇな・・・」とボソッと店先でタバコを吸いながら呟いていたのを私は聞いた。

じいちゃんは大人しく「騙されているふり」をするようになり、だまって移し替えただけの天丼も大人しく食べる様になっていた。

子供ながらに「夫婦ってよくわかんない生き物だな・・・」と思っていた。

ちなみにささやかな仕返しで、ばあちゃんに怒られた時やお小遣いが欲しい時、私は「そのお弁当、蕎麦屋の天丼詰めただけだよってじいちゃんに言っちゃおうかなぁ~」とばあちゃんをゆすっていた。
その天丼ネタで少なくても3回は小遣いが貰えた。1回50円は貰っていた。

大人になって私も夫婦になり分かるようになった。

どちらかが賢く居ないと続かないのだ。

じいちゃんは賢く騙されていたんだな・・・と感じるようになった。

私は賢くないのでじいちゃんみたいに騙されてあげることは出来ないだろう・・・。

きっと50円をよこせと言った時と同じことをするだろう・・・。

大人になった今は50円では満足せず、1000円よこせと言うだろう。

賢い旦那のおかげで喧嘩する事はないが、もし喧嘩をしたら旦那から1000円むしり取り、そのむしり取った1000円であの時のばあちゃんみたいに「たこ焼き」を食べて帰って来るだろう。