ゆるるん自宅警備

大人になりたくない大人のブログです

無神経な子供

子供の頃、ばあちゃんは太っていたので「お腹の中に赤ちゃんがいるんじゃないか?」と思い「ばあちゃん!弟か妹が欲しい」とねだった。

ばあちゃんはケラケラ笑い「それは無理なんだよ」と答えていた。

何も知らない子供の頃の私は「じゃあ何でばあちゃんのお腹はこんなに出てるの?赤ちゃんが入っているんじゃないの?」と言ったら「ばあちゃんのお腹の中には赤ちゃんじゃなくてスイカが入ってるんだよ」と答えた。

私はスイカよりメロンが好きだったので「スイカが入ってる」と聞いてがっくりした。

 

太っている人はみんなお腹の中に赤ちゃんがいると本気で思っていたし、着物を着ている人はおばあちゃんでもみんな成人式だと思っていた。

「ばあちゃん!あのおばあちゃんはこれから成人式に行くの?」と子供のでっかい声で言うとばあちゃん慌てて私にゲンコツをして「おほほほほ・・・すみません・・・この子ったら・・・とっても素敵なお着物で・・・」と道行く人に謝罪した。

太ってるおばさんを見たら駆け寄ってお腹に向かって、でっかい声で「赤ちゃーん!いつ出てくるんですかぁ~?」と話しかけていた。

もちろんまたゲンコツだ。

泣きながら「なんで?赤ちゃんいないの?ばあちゃんと一緒でスイカが入っているの?」と聞くともう一発ゲンコツをお見舞いされた。

当時は何でゲンコツされているのか分からなかった。

ばあちゃんは「すみません・・・うちの子が失礼な事を・・・本当にすみません・・・」と頭を下げていた。

おばさんは「あはははは!元気な子だねぇ!おばさんのお腹の中には美味しい肉がたくさん詰まってんだよ!」と笑っていた。

ばあちゃんはひたすら謝っていた。

どうしても弟か妹が欲しい私は赤ちゃんを諦めきれなかった。

ばあちゃんに「赤ちゃんをデパートに買いに行こう!」と提案したこともあった。

もちろん赤ちゃんはデパートで売っていないので買えるわけがない。

そもそもばあちゃんからしたら手のかかる孫は私だけで十分だったと思う。

ばあちゃんは「赤ちゃんはね、その辺で売ってるもんじゃないんだよ!コウノトリが運んでくるもんなんだ!あんたはちっとも言う事聞かないからコウノトリは弟も妹も運んでこないよ!よその家に運ぶよ!」と言い切った。

弟や妹が運ばれてこないならお兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しいとお願いした。

「あんたが生まれてる時点でお兄ちゃんもお姉ちゃんもいないんだから出来るわけないでしょう!」と言われて終わった。

ばあちゃんがダメならじいちゃんにお願いするしかない。

じいちゃんに「弟か妹が欲しい。ダメならお兄ちゃんかお姉ちゃんでもいいよ!」と言ったら「きょうだいってのは大変だぞ、おやつは分けなきゃいけないし喧嘩だってするぞ。一人っ子なら全部ひとり占めできるんだ。じいちゃんは貧乏な家で育ってたくさんきょうだいが居たから一人っ子が羨ましかったなぁ」と言った。

そっか・・・きょうだいってのはそういうもんなのか・・・。

でも弟か妹が出来たら私はおやつを分ける自信がある。

一緒に遊んで喧嘩もしない。ちゃんと可愛がる!だからデパートで買ってくれとお願いした。

当時の私はデパートで売っていない物はないと思っていたのだ。

そんな事をじいちゃんに伝えても「いいかぁ、お前は一人っ子なの!じいちゃんは赤ちゃんを産む事は出来ないんだ。俺が産めるのは屁くらいだ」と言って「ぶっ」と一発屁をコイて「ほらよ・・・これお前にやる」と屁を渡してきた。

じいちゃんに赤ちゃんを産めと言っているのに屁をコクなんて心外だ!

そんなもん貰っても嬉しくないし不愉快なだけなので受け取るわけもなく私はプイっと不貞腐れた。

 

他のお友達の家には「コウノトリ」が来て赤ちゃんを置いていく。

みんなお兄ちゃんやお姉ちゃんになっていく。

よその家に行き赤ちゃんを見せてもらうと赤ちゃんはとっても小さくてカワイイ。

よその家はうちよりもキレイだしオシャレなのでコウノトリもそっちを選ぶのは仕方ない事なのだろう。

こんな小汚いとり肉屋にあんなにカワイイ赤ちゃんを置いていくわけないなぁ・・・などと考えた。

なのでじいちゃんに「引っ越し」か「建て替え」を提案した。

新しい家にすればコウノトリもうちに赤ちゃんを置いて行ってくれる気になるかもしれないと思ったのだ。

ウキウキ顔で報告する私とは反対にじいちゃんは呆れた顔で「お前なぁ・・・家を建て替えたって広くなるわけじゃないし、引っ越すって言ったってどこに引っ越すんだよ・・・行くところなんてどこにもないぞ!うちはずっとココなの!」と言い切った。

ばあちゃんも「馬鹿な事ばっかり言ってないで片付けなさい!」と怒鳴った。

店先で「赤ちゃんが欲しいよ~」と大泣きした。

お客さんは何事か?と心配して「どうしたの?お腹でも痛いの?」と聞いてきた。

「じいちゃんもばあちゃんも赤ちゃんを産んでくれないし、コウノトリも全然来てくれない!」と言ったらお客さんは苦笑いをした。

そんな私を見て一人のお客さんが私に赤ちゃんの人形をくれた。

じいちゃんは「おぉ!よかったな」と言っていたがばあちゃんはその赤ちゃんの人形を嫌がっていた。

ばあちゃんからしたら本物っぽくて気味が悪いらしい。

赤ちゃんの人形を見て私は喜んだ。私はそんなばあちゃんの気持ちなんてお構いなしに遊んだ。おんぶしたり抱っこしたりして遊んだ。

でもばあちゃんだけは赤ちゃんの人形が受け入れられなくて神社に持って行ってしまった。

私はまた泣いた。

じいちゃんは「しょうがねぇだろう・・・ないもんはないんだよ・・・」と言っていた。

ばあちゃんは「あんな気味悪い人形のどこがいいの!もうないんだから泣かないの!」と言って汚いひよこのぬいぐるみを渡してきた。

とり肉屋の孫にひよこのぬいぐるみを渡されても何とも言えない感情しかわかない。

ひよこのぬいぐるみは押すと「ぴよぴよぴよぴよ」と音が鳴る。

その音を聞きながらコウノトリを恨んだ。

私はその日から赤ちゃんを産んでくれと言わなくなった。

どうせコウノトリはまた汚いひよこのぬいぐるみを置いていくんだと思ったから。

でもゲンコツはいつまでもされた。

近所に止まっていた霊柩車を見て「あの家はお金持ちだね!あんなにすごい車を買ったんだね!」とでっかい声で言ったり、近所の優しいおばあちゃんに「うちのばあちゃん怖いからおばあちゃんがうちに来て私の新しいばあちゃんになって」と言ったりしたからだ。

今思うと子供の頃の私は残酷だった。

ばあちゃんがゲンコツしたくなる気持ちもわかるようになってきた。