ゆるるん自宅警備

大人になりたくない大人のブログです

機械の思い出

うちの実家は最新家電に縁がない家だった。

ばあちゃんはメカ音痴でリモコンの事を「ピコピコ」って言ってたし、新しく買い替えると使い方が分からなくなるって家電はずっと壊れるまで同じものを使っていた。

テレビは14インチ位のブラウン管の懐かしいナショナルのテレビで何故か画面のすぐ下にリモコンを収納できる場所があり、長年使っていると埃が溜まりリモコンを入れるても取り出せなくなって苦労したりした。

今思うとどうしてリモコンの収納なんて必要なの?と思うが当時の私はリモコンがあるだけで嬉しかった。

その前までうちのテレビはちびまる子ちゃんの居間にある様なテレビだったので今の時代には信じられない「テレビをたたいて治す」って事もやっていた。

電子レンジ導入もエアコン導入も他の家より遅く、私は子供の頃から「エアコン買って」とか「電子レンジでチンしてみたい」とか言い続けたが叶うのは私が大人になってからだった。

 

夏は「クーラー」エアコンではない「クーラー」だった。

夏の暑い日は年期の入ったクーラーを使った。

何とも頼りない茶色いクーラーで壁に操作するスイッチが付いているタイプ。

家に一台しか付いていなくてその部屋で過ごして居た。

冬の寒い日はガスファンヒーターの目の前は場所争いが激しくて、早く起きた人間の特権だった。

私は寝坊助と呼ばれていたのでガスファンヒーターの目の前を陣取る事は出来ずに、真横に座って温かい風のおこぼれを頂いていた。

よその子の家に行くと「エアコン」がありいつも「いいなぁ」と言って羨ましがっていた。

我が家の「クーラー」が「エアコン」に変わった時は「この一つの機械であたたかい空気も冷たい空気も出せるなんて物凄いやつだなぁ」と感心したと同時に「やっとうちにもエアコンが来た!」と喜んだもんだ。

 

よその家のお古で「電子レンジ」が来た時も私は舞い上がった。

中古の電子レンジだけど、やっとこれで私の家でも「あたため」が出来る!と無駄に冷凍食品を買ったり、じいちゃんと二人で「チンするピザ」を買ってきて二人でピザにドはまりした時期もあった。

全自動洗濯機もこれ一個で柔軟剤まで入れてくれるのか!?とキャッキャッした。

PHSと携帯電話が世の中に出回ってからだいぶ時間が過ぎてからじいちゃんもばあちゃんも携帯電話デビューを果たした。

二人とも3つボタンが付いている簡単なやつ。

じいちゃんは自分で買っていたけど、ばあちゃんの携帯電話は私がプレゼントした。

携帯電話を買ってもらったばあちゃんは不思議がって「どうしてこんなので会話が出来るんだ?」と言っていたけどニコニコして携帯電話を見て無駄に何回も電話をかけていた。

じいちゃんもばあちゃんも「メール」は出来なくて電話をかけるだけ。

数字を押してかけるボタンを押すだけなので結構気軽に使えるようだ。

 

ばあちゃんに携帯電話を買ってからしょっちゅう電話をかけてくるようになった。

ばあちゃん自身携帯電話を持ってみて「いつでもどこに居ても電話が出来る」と分かったのだろう。

ある日仕事中にばあちゃんが「ちょっと・・・ガスファンヒーターが壊れたんだけど・・・」と言って電話してきた。

私に電話するんじゃなくて、ガス屋さんに電話するのが正しいだろう。

でもガス屋さんに電話したら「型番を教えてください、型番が分からないとお答えできません」と言われてしまったらしい。

型番とは結構厄介だ。ばあちゃんに言っても分かるわけないし、私もすぐに帰れない。

「あのね、メーカー名の下とかに英語の文字が書いていない?それを言ってくれたら私が電話するよ!」と言ったら「英語・・・英語・・・英語・・・あった!読むね!」と張り切って言ってくれたので紙とペンを用意してメモの用意をした。

電話の向こうで「テー!・・・オー!・・・ケー・・・」と元気よく言ってくれるので言われたとおりに書いた。

書けた文字を見て力が抜けてしまった・・・紙にでっかく書いた文字は立派で「TOKYOGAS」だった・・・。

「ばあちゃんそれメーカー名だよ」と言ったら「めーかーめーってなに?あんた東京ガスで買ったってよくわかったね!すごいね!」と嬉しそうに言った。

メーカー名をうまく伝えられないので、「英語と数字がくっついて書いてある文章を探して!ヒーターの裏とかに書いてあるかも・・・」と言ったら頑張って色んな文字を読み上げてくれたので型番を知ることが出来た。

東京ガスに電話したら物凄い古い型なので部品は無いと言われたので、自然と新しい物を買う事になった。

物持ちがいいのでこうなるのは何となく分かっていたが、ばあちゃんのカタカナ英語が聞けたので良しとしよう。

 

地デジになる時もだいぶ困った。

「地デジ」の説明がうまくできないので「電波が変わるから今のテレビじゃ見れないんだよ」としか言えない。

じいちゃんは「何で変わるんだろうなぁ・・・変えなくったっていいのになぁ・・・まだ壊れてないのによ~」と渋っていた。

そんな質問は是非あのシカのマスコットキャラクターに言っていただきたい。

うちも何だかんだ言って地デジ用のテレビを買った・・・まではよかった。

リモコンの使い方、奮発して買った録画もできるDVDプレイヤーの使い方まで私が説明しなきゃいけないのだ。まず電源を入れる方法からだ。

新しいテレビのリモコンはボタンがいっぱいある。

「この赤いボタンを押すとテレビが付くんだよ」と言ったら「ホントだー!」と言う。

傍から見たらバカバカしいかもしれないが、本当にこんなやり取りなのだ。

でも毎回「これどうやってテレビつけんの?」と聞かれるのはめんどくさい。

なので「テレビの電源を付けるのと消すのは赤いボタン」とか全部紙に書いた。

二人とも頑張って覚えてくれたみたいで、じいちゃんは一人で録画まで出来る様になった。

毎日録画した「水戸黄門」と「はぐれ刑事」を自分の好きな時間に見れるのが嬉しかったみたいで「これはすごいな~」と言っていた。

じいちゃんは毎日色んな番組を録画してずっとテレビを独り占めしているので、ばあちゃんは全然テレビを見れなくなって私の部屋のテレビを見ようとしたらしく「あんたの部屋のピコピコの赤いボタン押してもちっともテレビつかないよ!」といきなりクレームの電話が来た。

「あぁそっかぁ~・・・私の部屋のテレビのリモコンは緑のボタンだった・・・」と思い「私の部屋のテレビは緑のボタンなんだよ。丸い緑のボタンが右上にない?押してみて」と言ったら「あぁ!ほんとだ!ついたついた!何であんたの部屋のテレビは緑なの?」と聞かれたがメーカーの違いとしか言えない。

私の部屋にもテレビの使い方マニュアルが必要みたいだ。

 

機械音痴の二人だけどマニュアルを見ながら時代の流れに少しづつ乗っているみたいだ。

マニュアルを見ながら色んな事にチャレンジしている二人はなかなか微笑ましいかった。

一度だけじいちゃんからショートメールがきたことがある。

内容は「おじいちゃんだよきょうかえってくるとききおつけるんだよ」だった。

じいちゃんなりに頑張って文字を打ってくれたんだろう。

漢字の変換も出来ていないし、句読点もないメールだったが私は嬉しかった。

 

そんな出来事を懐かしいと思いながらクスクスと笑ってしまう。

出来事から思い出になってしまったけど、思い出ってやつは色あせることなくこうして今でも私は楽しんでいる。