ゆるるん自宅警備

大人になりたくない大人のブログです

ばあちゃんと高須クリニック

うちのばあちゃんは結構おしゃれさんだ。

以前「フランスとイタリアに憧れた出目金」と言うタイトルでブログを書いたけど、1つの記事ではばあちゃんの武勇伝は収まるわけもなく、ちょこちょこ私はばあちゃんの事をネタに記事を書いている。

ばあちゃんはおしゃれなのだが、ハッキリ言って不細工だ。これは孫の私だからハッキリ言える。

例えていうならブルドックが全速力で走ってガラスにびたーん!とぶつかった顔とでも言ったら分かりやすいと思う。なかなか愛嬌のあるかわいい顔だ。

でもばあちゃんは自分自身で「不細工だわ~」と言いながら三面鏡に映る自分の顔を見て自分の不細工さをいちいち確認していた。

ばあちゃんが不細工なのはネタみたいになっていて、子供の頃ばあちゃんに理不尽に叱られたり、理不尽なゲンコツをくらった時なんかは悔しくて仕方なくて、「ばあちゃんなんかお尻の穴みたいな顔をしているくせに・・・」とか「よくその顔で世間様に顔向けできるね・・・」などとばあちゃんの「不細工」の部分をより多く責める事で理不尽に叱られた自分のメンタルを保っていた。

こう書いていると実に生意気な「クソガキ」である。

そんな私は後の事も考えずに「私はばあちゃんに反撃した!ガツンと言ってやった!えらい!」と謎の優越感に浸り満足していた。

でもそんな優越感は長く続くわけもなく、あっという間にばあちゃんに反撃を食らう。「あんたはブツブツとよくもまぁ次から次へと減らず口が叩けるね!あんたなんか私の孫なんだよ!孫って事はあんたもお尻の穴の顔って事なんだよ!あんたも世間様によく顔向けできるね!この不細工!!」と返ってきた。ごもっともとしか言いようのない。

ブーメランとはこの事だ。ばあちゃんからしたら所詮は子供の反撃、痛くもかゆくもないだろう。すぐに余計な説教が追加され2倍にも3倍にもなって自分の所に返ってきた。最後の最後に「ばあちゃんの顔より豚のお尻を眺めてた方がよっぽどいい・・・」と豚にも失礼な捨て台詞を残して自分の部屋に逃げ込み、自分の顔を鏡で見て「ばあちゃんみたいな顔になりませんように・・・」と神様にお願いしたりしていた。

 

子供の頃は不細工ばあちゃんと言って馬鹿にしたが、私はばあちゃんの顔は親しみやすく愛嬌のある顔だと思うようになっていた。決して美人ではないけれど、なんだか豪華な顔だと思う。私もそれだけ大人になったのだ。

いつも「メガネは顔の一部だから~」と言って豪華なメガネを作ったりしていたが、豪華なメガネが似合う顔なのだ。

でもばあちゃんは相変わらず三面鏡で「不細工だわ~」という日々を過ごして居た。

 

そんなある日「野村沙知代さんが整形した」とTVで放送されたことがあった。

ばあちゃんは「サッチーが整形したんだって!どこでしたのかな?」と興奮気味に聞いてきたので「わかんないよ!高須クリニックじゃない?」と私は適当に答えてしまったのだ。

美容整形と言ったら私の中で「た、か、す、クーリニック♩♬」とリズムのある、あのメロディーしか流れないのだ。

ばあちゃんは「私も高須クリニックに行ったらサッチーみたいにしてくれるのかな?」と聞いてきたので「元が違うんだから全く同じにはならないよ」と言った。

サッチーは美人だ。整形をして更に美人になった。

元が違うんだからばあちゃんがいくら憧れたってサッチーにはなれないのだ。

そんな事を言ってもばあちゃんは全く私の話を聞かなかった。

いつのまにか「サッチーみたいになりたい」から「整形手術はいくらでできるか?」と言う問題になっていた。

ばあちゃんは「目を二重にしたい」とか「しわを取りたい」とか具体的な事を言うわけじゃなくて漠然と「キレイになりたい」とか「美人になりたい」とか言っていた。

そんな漠然としたものにいくらくらいで出来るんじゃない?などと答えられるわけもなく、「高須クリニックに行って直接聞いてくれば?」と答えていた。

 

月日は流れた・・・数年後。

ばあちゃんの整形ブームはまた再び火が付き燃え始めた。

ばあちゃんもばあちゃんなりに調べたんだろう・・・。

ある日CMを見ながら「高須クリニックの大先生いるじゃない?私の9歳年下なのよ~♩イケメンよね~」と言い出した。

ばあちゃんはどの人が高須克弥が誰なのか?がわかるようになっていたのだ。

最初の頃は石油王みたいな格好をしている人を高須先生と呼んでいたのに・・・。

しかも何で年齢まで知っているのだ?大先生って息子さんの事まで調査済みなの?

きっとご近所ネットワークから仕入れてくるんだろうけど、時々ばあちゃんはCIAの諜報員なんじゃないのか?って思う時がある。井戸端会議も馬鹿にできない。

「そうなんだ~結構年下なんだね」と言うと「この年になったら9歳なんて気にならない♬」と言い出した。

何を気にする必要があると言うのか?ばあちゃんが気にしなくたって高須先生は気にするかもしれないし、高須先生とどうなりたいのかが不明だけど怖くて聞けない。

高須クリニックの大先生っていい男よね♪若先生より大先生の方がばあちゃんのタイプなの♪」と高須先生の事をすごく気に入っていた。

 

ばあちゃんは勝手に高須先生の事を「ヨン様」と呼び始めた。きっと素敵な男性=ヨン様なのだろう・・・。

「ほら!!あんたヨン様出てるよ!!」とCMが流れるたびに私とじいちゃんに教えてくれる。

じいちゃんは「ほ~、あの石油王はヨンサマーっつーのか?」と言いながら大きな勘違いをしている。

ヨン様じゃないけどばあちゃんのヨン様なんだ・・・あの石油王じゃなくてメガネをかけている人なんだけど・・・」と説明している自分もよく分からなくなっていた。

じいちゃんは「ほ~、メガネの人かぁ・・・日本人っぽいけどヨンサマーって事はアメリカ人なのか?」と聞いてきた。

じいちゃんからしたら「ヨン様」ではなく「ヨンサマー」と聞こえるらしい。

これは説明を一から始めたら難しくなるので「あのメガネの人は高須克弥って言う有名なお医者さんだよ」と正しい情報だけを伝えた。

「なんでそんな日本人の医者がヨンサマーなんて呼ばれてんだ?」と聞かれたがちょっとめんどくさくなったので「何でだろうね・・・」とだけ答えておいた。

 

高須先生を見て興奮したばあちゃんは勢いがついて「ヨン様の所で整形したい」とじいちゃんにお願いしていた。

じいちゃんは「ほ~整形してどうすんだ?キレイになって八百屋にでも行くのか?」と全く相手にしていない。

ばあちゃんは機嫌を悪くして「整形してキレイになってヨン様とデートするんだから!」とぷりぷり怒りだした。

「お前は馬鹿だなぁ・・・整形をお願いするってことは今の不細工な顔をヨンサマーって人に見せるんだろ?いくらヨンサマーだって化粧もしていないばあさんの顔を見て手術した後にほいほいデートするほど暇人じゃないだろう・・・ああいう人は忙しいんだ。お前なんて相手にされないよ」と自分が言われたら腹が立つが、じいちゃんはなかなか鋭い事を言った。

そうだ・・・ああいう人は忙しんだ。じいちゃんの横でうんうんと黙って私はうなずいた。

「私がヨン様の所でキレイになったら、あんた達なんて相手にしてやんないからね!泣きついたって知らないよ!高倉健からデートを申し込まれたってあんた達は連れて行かないからね!!」とついにヒステリーを起こし始めた。

高倉健からデートを申し込まれると考えるばあちゃんの想像力の豊かさに何も言えなくなった。

 

私はじいちゃんに「あんなに言ってるんだから、ちょっとくらいやらせてあげたら?」と相談した。

例えばなんちゃら注射とかでもばあちゃんは喜ぶだろうと思ったのだ。

高須クリニックに行って高須院長には会えるわけだし、高須院長に何かしてもらえればばあちゃんは満足してご近所に自慢できるわけだ。

話を聞くご近所さんは大変だと思うが、この方法が一番手っ取り早く解決できる。

じいちゃんは「あの顔を全部整形するとしたら一千万位かかるんじゃないのか?」と、とんでもないことを言い出した。

「なんでそんな予算になるの?」と聞いたら「だって聞いたらばあさんは野村のサッチーみたいになりたいんだろ?サッチーみたいにするって大変だぞ。」と言った。

なんだかんだでちゃんと話を聞いているじいちゃんをすごいと思った。

「おい母さん、ヨンサマーの所に行って来いよ。サッチーみたいにしてもらえよ!」と気前よく言った。

ばあちゃんは「ヨン様にキレイにしてもらえる!お父さんありがとう!」とさっきとはまるで別人の様に可愛らしくお礼を言った。

そこから「どんな感じに手術してもらうか?」などと具体的な話になったらばあちゃんの表情が一気に暗くなった。ばあちゃんは怖くなったみたいだ。

「やっぱり、このままでいようかな・・・不細工でもいいや・・・」としょんぼりしてしまった。

そりゃサッチーみたいになるんだから注射一本って訳にはいかないだろう。

「じいちゃんがお金を出すって言ってるけど本当にやらなくていいのね?高須先生や高倉健とデートしなくてもいいのね?」と言ったらコクンとうなずいた。

じいちゃんからしたらシメシメと思う事だろう。

少々めんどくさいばあさんの相手をしたけど、感謝され漢を見せつけることが出来てその上出費はゼロ。じいちゃんの作戦勝ちだ。

ばあちゃんはその日からせっせとお化粧の腕をあげた。

せめて眉毛の雰囲気だけでもサッチーに寄せたかったらしい。

相変わらず高須クリニックのCMを見ると「ヨン様~♩」とはしゃいでいる。

高須先生に会える日を夢見てせっせと眉毛を書いているばあちゃんは整形をしていないのに何だかとってもかわいく見えた。

「高須院長には西原先生がいるんだよ」とは口が裂けても言えない。