ゆるるん自宅警備

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突撃したい!隣の晩御飯

我が家のお隣さんは中国のご家族が住んでいた。

 

名前も中国っぽいし、一度部屋番号を間違って荷物が届き受け取ってしまった時があって中国からの荷物だった。

 

お隣さんご夫婦は会うといつもニコニコして挨拶してくれる。

お子さんも目がくりくりした男の子でかわいい。

 

窓が開いていると男の子の歌声が聞こえてきたりする。

言葉が違うから何を歌ってるのかは分からないが、ほんわかさせてくれる。

 

お隣さんとは挨拶程度のお付き合いだったが、我が家はお隣さんに大変お世話になっていた。

 

毎晩夕ご飯の時間になるとめっちゃいい匂いがするのだ。

 

特に炒め物の時は半端ない。

 

目を閉じ思いっきり深呼吸するとそこには極上の中華料理が見える。

 

私がヨネスケならマッハ5位の勢いで突撃している。

 

でも私はヨネスケじゃないので突撃出来ない。

 

そもそもマッハ5も出せるわけない。

 

私は「本場の調味料とか使ってるのかな?やっぱり中華鍋使ってるのかな?」などとイメージを膨らませこっそり毎晩楽しみにしていた。

 

我が家の質素な晩御飯でもお隣さんのいい匂いのおすそ分けがあれば十分満足することが出来ていた。

 

イメージとしては窓を開けたら「陳健一」がそこに居て料理を作っている感じ。

 

「回鍋肉」の時の匂いを嗅げば、我が家のケチケチ野菜炒めでも「回鍋肉」に変身するくらい。

 

いっそのこと白いご飯だけ用意すれば香りでご飯が食べれるんじゃないか?って思う時もあった。

 

お隣さんは我が家がそんな思いで匂いを嗅いでいる事なんて知るはずもなく、こっそりお夕飯の匂いを嗅いで気持ちを満たしていた。

 

 

そんなある日、お隣さんが引っ越してしまう事が分かった。

 

引っ越し屋さんのトラックが居て、お隣から荷物を運び出している!

 

仕事の都合なのか?引っ越しは仕方がない。

 

さみしいけどお元気で・・・などと思った時私は気が付いた。

 

 

「なんてこった!もう晩御飯の匂いをかげない!」

 

 

一年以上こっそりと極上の中華の匂いを楽しんでしまった私。

 

もう普通の中華の匂いじゃ満足できるわけもない。

 

かと言って「すみません、こっそり晩御飯の匂いを嗅いでました。最後にレシピを教えてください」と言えるわけもない。

 

こんな事言ったらただの変な人だ。

 

「日本人は変な人」などとイメージが付いてしまったら日本中の人に申し訳ない。

 

土下座くらいじゃ済まないだろう。

 

「ここは国と国の問題になる」など勝手に想像してグッと堪えた。

 

お隣さんのお引越しは無事済んだ。

 

そして私の家に極上の香りが届くことは無くなった。

 

心なしか質素な晩御飯がより質素に見える・・・

 

そんなある日マンションのエレベーターを降りた時、どこからかいい匂いがする・・・

 

 

きんぴらごぼうの匂いだ!」

 

 

なんだかどこか懐かしい、あったかい家庭の匂い。

 

そっか、和食の匂いより中華の匂いの方が強いから今まで気が付かなかったんだ!

 

どこからだろうと思い犬の様にクンクン嗅ぎ続けたらお隣のお隣さんだった。

 

優しくて穏やかなおばあちゃんが暮らしているお宅だ。

 

その日からエレベーター前で「今日は煮物だ・・・ぶり大根っぽいな」とか「今日はカレーだな」などとあったかい家庭料理の香りを楽しむ日が再開した。

 

食べ物の匂いって不思議なもんで気持ちを豊かにしてくれる。

 

子供の頃辛い事がありトボトボと歩いて家の前まで帰るとばぁちゃんがカレーを作る匂いがして、それだけで元気が出て「ただいま!」と笑顔で玄関を開けた時があった。

 

私はご飯の匂いでたいがい元気になれる。

 

人一倍いやしんぼな私なのでこれからもよその晩御飯の匂いを嗅ぎ続けるだろう・・・。

 

「突撃!隣の晩御飯!」ってやっていいですよと言われたら私はヨネスケっぽくお邪魔するだろう。

 

ヨネスケが心の底からうらやましい。