ゆるるん自宅警備

大人になりたくない大人のブログです

旦那の修羅場

結婚してすぐ私は引っ越したばかりの家で倒れてしまいました。

 

いきなりものすごくお腹が痛くなり、洗面所で倒れ連絡も出来ないまま悶え苦しみ旦那が帰ってくるのをただ祈るばかり・・・

 

 

前のアパートにカギを返しに行った旦那が戻るまでお風呂の足ふきマットの上でダラダラと信じられない位汗を流し痛みに耐えていました。

 

旦那が帰宅して青ざめた顔で私を発見し「どうしたの?大丈夫?」と聞かれた私は「救急車を呼んで・・・その前に飲み物頂戴・・・絶対病院行ったら飲ませてくれないから・・・」と言い500ミリのペットボトルのお茶を飲み干しました。

飲んじゃったもん勝ちだとおかわりまでしました。

 

そのまま救急車で運ばれ町の総合病院で「お腹の中で出血してる、うちでは輸血の量も足りないし、手術までに時間がかかるから大学病院へ」と言われ再び救急車で大学病院へ・・・。

 

「え?また移動なの?」と怒り気味の不機嫌な顔で旦那に聞いたんでしょう。

 

ちょこんと申し訳なさそうに小さく座ってる旦那が「・・・そうみたい」と消えそうな声で返事をしているの真横で「もうー早く手術しちゃって!」と言わんばかりの顔を私はしていたでしょう。

 

救急車の揺れで私の全身に痛みが響く。

 

救急車には総合病院の医師も何故か一緒に乗ってきてた。

 

特に何もせず旦那の横に座り「痛いですよね・・・」と聞いてくるので「えぇ・・・ものすごく痛いですよ、この揺れ何とかしてください・・・」と返す。

 「もうちょっとですので・・」となだめる医師。

痛みMAXで機嫌が悪い私に気づいてる旦那は気まずそうにじっと黙って座っている。

 

気まずい救急車の中でこの会話3回は繰り返しました(笑)

 

大学病院に着き処置室に運ばれた時は出血量が増えていたのか、どんどん自分の手が白くなってきました。

 

バタバタと処置室の扉が開け閉めされるたびにて小さくちょこんと座ってる旦那が見える。

 

「大丈夫さ!これ位じゃ死なないよ!」と心の中で思ってる最中も、私の乗ったストレッチャーは忙しくあちこち移動して検査室に運ばれました。

 

途中テレビの電源を消したみたいに検査の最中に意識が飛びました。

 

どこから聞こえるんだろう?遠くから声が聞こえてきました。

 

「血圧が48です!」と言う声・・・あれ?これってまずいんじゃない?

 

旦那にお別れの言葉とか言った方がいいのかな?銀行の暗証番号とか伝えた方がいいのかな?などと間抜けな事を考えている時、ドクターの声で「この子発達障害があるみたいだけどおかしな事とか変な事言ってなかった?」と聞こえてきた。

看護師さんが「いえ・・・別にこれと言って変な発言はありませんでしたよ」と答えていた。

 

もしもし?これ全部聞こえてますよ・・・

 

目も開けれないし動けないけど全部聞こえてるからね・・・。

 

失礼な事を言ったドクターの顔を見てやろうと、やっとの思いで目を開けてたら「あ!!気づきましたよ!!ご主人呼んできます!!」と看護師さんが急いで扉を開けて旦那を呼んだ。

 

呼ばれた旦那は半分泣きそうな表情をしていた。

やっとの思いで絞り出した言葉が「・・・大丈夫?」だったんでしょう。

そんなのお構いなしに私が言った言葉は「ご飯食べた?」でした。

 

まさかこんな状態でお腹すいた?と聞かれると思ってなかったんでしょう。

きょとんとした旦那は「え?・・・え?・・・?まだ・・・食べてない」と答えてました。

 

すかさず「お水飲んでる?」と聞いたら「え?えぇ?・・・飲んでないよ」

「ダメじゃん!ご飯食べて、お茶飲まないと!ちゃんとご飯食べなよ!」と謎の説教をされた気の毒な旦那。

 

今でも何でこの質問をしたかわかってません(笑)

 

その後私はまた意識がなくなり話せなくなってしまいました。

 

どれ位たったのでしょうか?また目を開けることが出来た時、数人のドクターが私を囲んでいました。

「え?白い巨塔?総回診?」などと、とんちんかんな事を思っていたらまた痛みが襲ってきました。

 

「ううう!ぐぐ」と声をあげたら、ごつい黒ぶちメガネのドクターが「OK!OK!へい!こっちを見て!君は今ものすごい痛みを感じているんだね!大丈夫だよ!出血量が多いから開腹手術をするよ!傷が大きく残るけどいいかな?」と軽快な口調で話しかけてきた。

 

「いいとも!」とでも答えた方がよかったんだろうけど余裕がない私はぶんぶんと頭を振るしかできなかった。

レイザーラモンHGみたいに「OKOK!じゃあ麻酔科医の先生呼ぶからね!」と言い残し麻酔科の先生と交代した。

 

 

麻酔科の先生は女性で持田香織をめっちゃ不機嫌にしたみたいな顔をしていた。

 

痛みで苦しむ私を気にもせずに不機嫌そうに淡々と同意書の説明を始めた。

「旦那に言ってくれ」とお願いしても「いや・・・これ見えてます?ちゃんと読んでください」と言って目の前に同意書を近づけて説明してくる。

 

「~~~~なんでサインください」と言われてもサインできない。

 

旦那に代筆を頼むと「本当にちゃんとわかりましたか?」と聞いてきた。

 

 

おかげさまで嫌と言うほど分かりましたよ(笑)

 

 

持田香織をクリアした私の所に旦那が来た。

 

どうやら旦那も持田香織の説明をクリアしたらしい。

 

「これから手術だけどちゃんとご飯食べるんだよ・・・明日会社大丈夫?」とまたまた状況に合わない変な質問を投げかけてしまった。

旦那の「・・・うん、ご飯食べるよ・・・会社は朝電話する。心配しないで、頑張ってね」などと当たりさわりのない優秀な返事を旦那はした。

 

手術室に運ばれた私は「あの・・・麻酔はゆっくり入れてください・・・痛いのはもうお腹いっぱいです・・・」などとすかさずオーダーした。

 

「OK!OK!ゆっくりね!じゃあ手術頑張ろうね!」とレイザーラモンが明るく答える。

 

この状況の私はレイザーラモンの明るさに随分と救われた。

 

麻酔で眠る前に「ラモン・・・頼んだよ・・・旦那よ・・・ご飯をちゃんと食べるんだよ・・・」などと思いながらマスクをつけ眠りについた。

 

 

だんだん機械音が遠くから聞こえてきて私は激痛で目が覚めた。

痛みで不機嫌MAXである。

輸血やら点滴やら色んな管がまとわりついてくる・・・。

 

横を見ると校長先生に叱られた小学生みたいにしょんぼりしている旦那がハッとした顔をしてお決まりの「大丈夫?」を聞いてきた。

 

大丈夫だけど大丈夫ではない。

 

なんてったって「腹切り」したのだ。

 

侍が命を絶つ行動だ。

 

でもここは「大丈夫」と言うしかない。

 

一発目の質問はもちろん「ご飯食べた?」である。

 

気まずそうに「・・・うん、食べたよ」と答えたけどここで質問は終わりではない。

 

「何食べた?」と聞いたら「え・・・おにぎり・・・セブンイレブンの・・・」と言い終わる前に「え!?それだけ?野菜は?」

完全に私嫌な奴(笑)

 

「で、でもお水も飲んだし大丈夫だよ・・・痛くない?」とオドオドする旦那。

 

「あ~痛い・・・もうね、いっぱいいっぱい・・・あ~しんど・・・」と言った瞬間旦那が「よかった・・・いつもの調子だ・・・」とやっと安心した顔をした。

 

「退院したらおっきなハンバーガーが食べたい・・・ポテトとドリンクはLサイズね・・・」と未来のオーダーも忘れない。

 

にこにこした旦那は「早く元気になって食べに行こうね」と約束した。

 

どうやら私はいつも食べ物の事を考えているみたいだ・・・

 

 

 

朝になるまでぽつぽつと旦那と二人で話をした。

言いにくそうに旦那が「あのね・・・眠っている間に先生から話があって聞いたんだけど、今回の事で自然に妊娠できなくなっちゃったんだって・・・それでね、先生は気を落とさないように言ってくれたのかな?不妊治療の事とか色々話してくれるんだけど・・・俺もうわかんなくて、「大丈夫です」って答えちゃったんだけど・・・」と申し訳なさそうに報告してきた。

 

かわいそうに・・・さんざん気まずい思いをして、一睡もしていないボロボロの状況でそんな話をされても「わからない」と思うし、とりあえず「大丈夫です」って言うしかないだろう。

 

癌になっても生きている私はちょっとやそっとの事では動じないつもりでいる。

生きているだけで充分。

 

「その時の「大丈夫です」って答えでいいと思うよ、まぁ二人で楽しくやって行こうよ、今はその話はいいや、それよりもっと楽しい話を聞かせてよ」と言ったら「えぇ・・・楽しい話?俺ね生まれて初めて救急車に乗ったんだ、あと人型の汗の形を初めて見た」と言った。

 

初めての救急車であんなに気まずい思いをするなんて思わなかっただろう・・・

ますます旦那が気の毒に思った。

 

人型の汗・・・私そんなに汗かいてたんだ・・・確かに髪の毛がべたべたした。

 

 旦那の話のレパートリーの少なさに「いつも通りだ」と安心したのを覚えてる。

 

 

 医師の話によると私は2リットルお腹の中で出血していたらしい。

事実を聞いた私は「よく生きていたな・・・」と自分の事なのに他人のような感想しか出てこなかった。

4単位の輸血をして私の手術は成功した。

 

 今回一番苦しんだのはきっと旦那だろう。

 

一日半、寝ないで、ただじっと処置や手術が終わるのを待ってるのは意外と辛いもんだ。

持田香織似の麻酔科医やレイザーラモン風の個性あふれる医師からの説明も戸惑ったことだろう。

ご飯を食べれる状況じゃないのに「食べてない」と素直に言ったら説教され、おにぎりを食べたら「それだけ?」と理不尽にキレられ何とも気の毒としか言えない。

 

お腹の手術の傷が痒くなる度に思い出すが、私はあの日の事をまだ謝れていない・・・。